ど素人がレバーレスコントローラーを自作してみた話④

デバイス

自作レバーレス第3号で初めて薄型レバーレスを作った私は、すっかり自作の楽しさにはまっていた。

前回作成した薄型レバーレスは、底面と天板をアクリル板の加工・販売業者に注文し、キーキャップはコミックノイズで購入したものを使用していた。

これはこれでかなり満足していたのだが、作っているうちに新たな欲が出てくる。

「3Dプリンタがあれば、もっと好き勝手に作れるんじゃないか?」

底面も天板も、自分の好きな形状・デザインで作れる。

それどころか、頑張ればキーキャップまで自作できるかもしれない。

そんなことを考え始めた結果、今度は3Dプリンタに手を出すことになった。

3Dプリンタについて調べてみる

当時、3Dプリンタについてはほとんど知識がなかったので、まずは家庭用3Dプリンタについて調べるところから始めた。

家庭用として主流なのは、大きく分けると「FDM方式(熱溶解積層方式)」と「光造形方式」の2種類らしい。

FDM方式は、フィラメントと呼ばれる糸状の樹脂を熱で溶かし、それを少しずつ積み重ねて形を作っていく方式。

材料が比較的安価で、ある程度の強度も出しやすく、実用的なパーツを作るのに向いている。

一方の光造形方式は、液体の樹脂に紫外線を照射して硬化させる方式。

FDM方式より表面が滑らかで、細かな造形も高精度に作れる反面、造形後の洗浄や二次硬化、換気などの手間があり、造形物も用途によっては強度面に気を使う必要がある。

今回作りたいのはレバーレスコントローラーの筐体。

見た目の細かさよりも、ある程度の強度があって実用品として使えることのほうが重要だ。

そう考えると、自分の用途にはFDM方式のほうが合っているように思えた。

Creality K1Cを購入

そこで購入したのが、Creality K1C。

完全閉鎖型の高速FDM方式3Dプリンタで、購入当時の価格は確か8万円前後だったと思う。

同程度のカタログスペックを持つ3Dプリンタと比較すると、かなりお買い得に見えたのが選んだ理由だった。

……とはいえ、このあたりはいつものことである。

今回も大して知識がないまま見切り発車で購入した。

そして、しばらく使ってみて分かった。

3Dプリンタというものは、思っていたより手が掛かる。

少なくとも、当時の私が使っていたK1Cはそうだった。

印刷中にフィラメントがうまく送り出されなくなり、途中で止まってしまうことが結構あった。

しかも、その原因がひとつではない。

押し出し機の汚れだったり、ノズルが詰まっていたり、フィラメントが湿気を吸っていたり、フィラメントを通すチューブの経路が悪かったり。

何か起きるたびに原因を探し、ノズルや押し出し機を分解して確認し、また組み直す。

「印刷ボタンを押したら、あとは完成するまで放置」

……という、購入前にぼんやり想像していた世界とは少し違った。

ただ、K1Cは比較的シンプルな構造をしていて、3Dプリンタ初心者の私でも、調べながらなら何とか分解・再組み立てができるレベルだった。

社外品のアップグレードパーツなども販売されており、それらを自分で取り付けることもできた。

手が掛かっただけに、入門機として積極的におすすめできるかと言われると少し悩む。

ただ、そのおかげで3Dプリンタがどういう構造で動いているのか、少しながら理解できたのは良かったと思っている。

Creality製3Dプリンタの、こうしたシンプルな構造やカスタマイズ性を好む人がいるのも、実際に触ってみると何となく分かる気がする。

今から入門機を選ぶならBambu Lab A1

ちなみに、3Dプリンタを触り始めてから1年以上経った今、初めての1台として選ぶなら、個人的にはBambu Lab A1あたりを選ぶと思う。

Bambu Labの3Dプリンタも使ってみたが、とにかく手が掛からない。

ノズル交換も工具なしで簡単にできるなど、メンテナンス性もよく考えられている。

それでいて価格も比較的安い。

もちろんCrealityにはCrealityの良さがあり、自分でいじる楽しさという意味ではK1Cを買ったことを後悔してはいない。

ただ、

「3Dプリンタで何かを作りたいのであって、3Dプリンタそのものをいじりたいわけではない」

という人には、Bambu Labのほうが入りやすいのではないかと思う。

3D CADにも初挑戦

少し話がそれたが、3Dプリンタで底面や天板を作るためには、当然ながら印刷するための3Dデータが必要になる。

そこで今度は3D CADにも手を出すことになった。

使用したのは、無料で使えるDesignSpark Mechanical。

もちろん3D CADもほぼ初心者。

分からないところを調べながら、とりあえず形にしていく。

K1Cの最大造形サイズは220×220×250mm。

レバーレスの天板を一枚物で作るには少し小さい。

そこで、天板と底面をそれぞれ2分割して設計し、プリント後に組み合わせる形にした。

DesignSpark Mechanicalで設計した自作薄型レバーレスコントローラーの天板(左)
DesignSpark Mechanicalで設計した自作薄型レバーレスコントローラーの天板(右)

アクリル板を業者に注文していたときとは違い、

「ここをあと数mm広げたい」

「この部分に穴を追加したい」

「もう少し形を変えてみたい」

と思ったら、自分でデータを修正して印刷し直せばいい。

もちろん印刷には時間が掛かるし、失敗することもある。

それでも、思いついたものを自分で設計して、そのまま実物にできるというのはかなり面白かった。

キーキャップも自作してみる

せっかく3Dプリンタを買ったのだから、キーキャップも自作できないか試してみた。

こちらも一応、形にするところまではできた。

しかし、実際に使ってみるといくつか問題が出てきた。

まずは耐久性。

PLAやPETGといった一般的な素材で作ると、キースイッチのステムにはめ込む部分がどうしても弱い。

最初のうちは普通に使えていても、何度か取り外しを繰り返していると、結合部分が折れてしまうことがあった。

カーボン系のフィラメントや、柔軟性のあるTPUなども試してみたものの、自分が満足できるものにはならなかった。

もうひとつ気になったのが、表面の仕上がり。

積層して造形するFDM方式では、半球状のキーキャップを作ろうとすると、どうしても積層痕や段差が目立ちやすい。

実際に操作する指が直接触れる部分だけに、このわずかな違いも気になってしまう。

造形の滑らかさという点では、キーキャップのような小さく曲面の多いパーツは、光造形方式の3Dプリンタのほうが向いているのかもしれない。

もっとも、ステムとの結合部分の耐久性も含めると、それだけで解決する問題でもなさそうだ。

このあたりは1年以上経った現在も、自分の中では満足できる答えを見つけられていない。

結局、キーキャップについてはネットショップなどで販売されているものを今も使い続けている。

何でも自作できると思ったが、そう簡単にはいかなかった。

自作レバーレス第4号が完成

そんな試行錯誤の末に完成したのが、自作レバーレス第4号。

3Dプリンタで作成した自作薄型レバーレスコントローラー
3Dプリンタで作成した自作薄型レバーレスコントローラーを斜めから見た様子

底面と天板を3Dプリンタで出力し、キーキャップも自作したものを取り付けている。

キーキャップについては最終的に常用できるものにはならなかったものの、

「筐体そのものを自分で設計して、自宅で作る」

というところまで来たことで、最初に作った第1号とはかなり違うものになった。

最初はホームセンターで買った箱に穴を開けていたことを考えると、ずいぶん遠くまで来た気がする。

そして現在のレバーレスへ

第4号を作ったのも、もう1年以上前のことになる。

それからも、気が向いたときに自作活動は続けている。

新しいキースイッチを見つければ試してみたり、ふと改善案を思いつけば3D CADを開いて設計を変更してみたり。

そして今年に入ってからは、3Dプリンタも新調した。

現在使用しているのはBambu Lab H2S。

H2SはK1Cよりも大きな造形に対応しているため、これまで2分割する必要があったレバーレスの天板も、一枚物としてプリントできるようになった。

これはレバーレスを作るうえではかなり大きい。

分割部分をどう接合するか考える必要がなくなり、設計の自由度も上がった。

現在使っているレバーレスも、そうした試行錯誤の結果できたものだ。

3Dプリンタで製作した現在使用中の自作レバーレスコントローラー
3Dプリンタで製作した自作レバーレスコントローラーを斜めから見た様子

現在使用しているキースイッチは、総ストローク1.8mmのKailh Saker Mini。

筐体についても、天板に傾斜を付けてみたり、見た目のデザインを少し凝ってみたりと、好き放題いじっている。

天板のデザインには、ChatGPTで生成した画像を使用し、3Dプリンタの多色印刷機能を使ってそのまま天板に描いている。

ただ、イラストをある程度きれいに表現しようとすると、通常の0.4mmノズルでは細かな部分の精度が足りない。

そのため0.2mmノズルを使用しているのだが、当然そのぶん印刷にはかなりの時間が掛かる。

現在の天板の場合、印刷時間は天板だけで約30時間。

データさえ変更すれば好きなデザインの天板を作れるのは3Dプリンタの良いところだが、実際に出力するとなると丸一日以上。思いつくたびに気軽に作り直せる、というほどではない。

それでも、自分の好きなように手を加えられるのは、自作ならではの面白さだと思う。

市販品なら当然、完成した状態で購入することになる。

一方、自作品なら、

「ここをもう少しこうしたい」

と思ったら、自分で変えられる。

そして、変更したものを実際に使ってみて、また気になるところが出てきたら作り直す。

この繰り返しが楽しい。

振り返ってみると、最初は単純に「レバーレスを自分で作ってみよう」と思っただけだった。

それがいつの間にかアクリル加工に手を出し、薄型化を始め、ついには3Dプリンタと3D CADにまで手を出していた。

レバーレスを作っていたはずなのに、気付けば「ものづくり」そのものが趣味のひとつになっていた。

今後も、良さそうなパーツを見つけたり、何か面白いアイデアを思いついたりすれば、たぶんまた作ると思う。

そして、自作レバーレスに大きな変化があれば、そのときはまた記事にしたい。

前回の記事:ど素人がレバーレスコントローラーを自作してみた話③

「ど素人がレバーレスコントローラーを自作してみた話」シリーズ
ど素人がレバーレスコントローラーを自作してみた話①
ど素人がレバーレスコントローラーを自作してみた話②
ど素人がレバーレスコントローラーを自作してみた話③
ど素人がレバーレスコントローラーを自作してみた話④

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